大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和55年(特わ)2319号 判決 1980年11月27日

本店所在地

東京都大田区<以下省略>

Y1株式会社

(右代表者代表取締役 Y2)

本籍

東京都大田区<以下省略>

住居

同都大田区<以下省略>

会社役員

Y2

昭和二八年○月○日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官東隆司出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人Y1株式会社を罰金八〇〇万円に

被告人Y2を懲役八月にそれぞれ処する。

被告人Y2に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人Y1株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都大田区<以下省略>に本店を置き、キヤバレー等の経営を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人Y2は被告会社の代表取締役(昭和五三年三月三一日以前は実質経営者)として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人Y2は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五二年四月一日から同五三年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四、八五五万八、三二八円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五三年五月三一日、東京都大田区<以下省略>所在の所轄蒲田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三九八万六、二六四円でこれに対する法人税額が一〇九万三、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五五年押第一六三四号の一)を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一、八五六万一、〇〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額一、七四六万七、一〇〇円を免れ

第二  昭和五三年四月一日から同五四年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四、二四三万一、九九九円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年五月三一日前記蒲田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三二二万八、六〇三円でこれに対する法人税額が八八万一、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の二)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、六一一万〇、四〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額一、五二二万八、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人Y2の当公判延における供述

一  被告人Y2の検察官に対する供述調書三通

一  A1ことA、B及びCの検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の飲食収入、簿外当期仕入高、簿外給料、社交員手当、簿外出演料、簿外厚生費、受取利息、諸税公課、簿外調査費、貸倒損失、事業税認定損、損金算入役員賞与、損金計上役員賞与及び賞与引当金繰入限度超過額に関する各調査書一通

一  蒲田税務署長作成の「証明書」と題する書面

一  東京都大田都税事務所長作成の「事業税(法人)、都民税(法人)税の納付状況照会に対する回答」と題する書面

一  東京法務局登記官作成の登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書三袋(昭和五五年押第一六三四号の一、二及び五)及び手帳二冊(同号の三及び四)

(法令の適用)

被告人Y2の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役八月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。さらに、被告人Y2の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した範囲内で被告会社を罰金八〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件は、キヤバレーを経営する被告会社において、その実質経営者か代表取締役である被告人Y2が二年間にわたり合計約三、二〇〇万円の法人税を免れたというものであるが、動機において格別酌むべき点もなく、その態様も、父の代からしていた脱税の額を増やすために、現金分の除外から売掛分の除外に拡げ、また、売上除外に対応して経費を除外するという巧妙なものであって、ほ脱率も約九四%と高率であり、その犯情は軽視できない。

しかしながら、ほ脱額は判示の程度にとどまっていること、本件犯行後反省し、進んで実際の売上金額及び除外金額を記載した手帳を提出していること、各年度について修正申告し、本税のほか一部ではあるが延滞税・重加算税等について納付していることなどの有利な事情も認められ、その他本件に現われた全ての事情を考慮して、主文のとおり量刑する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小瀬保郎 裁判官 久保眞人 裁判官 川口政明)

別紙(一) 修正損益計算書

Y1株式会社

自昭和52年4月1日

至昭和53年3月31日

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

Y1株式会社

自昭和53年4月1日

至昭和54年3月31日

<省略>

別紙(三)

ほ脱税額計算書

Y1株式会社

53 3 54 3期

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例